原著者のMike Rothさん(http://www.opsonicindex.org/)から許可を受けて翻訳しています。著作権は原著者にあります。
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『オルガスム・ハード・ドライブ』
マイケル・ロス

Chapter 1
マスターベーションは激しくなっていた。フランコはデスクの上のヴィデオ・ディスプレイ・モニターを愛撫する。スクリーンには自身を黒いディルドーで貫いている白人の女。それを濡れて毛を剃ったプッシーに突っ込む。呻きと鳴き声。フランコの目をじっと見つめる。彼のコックの根元の電気コードがきつく締まった。もっときつく締めつける。ブラックアウト寸前。彼は首からケーブルを外した。幻覚が空気に満たされた肺のように広がる。彼女はディルドーを下へ降ろす。おっぴろげた両足に手招き。彼女の手と足は今や柱につながれている。翼を広げたワシ。空を飛んでいる。こっちに来て。彼女のプッシーが囁いている。まんこは今や金色の陰毛の厚い森で覆われている。物凄いスピードでぐんぐんおっ勃つ。ケーブルがフランコのコックをドライブベイに入れた。濃い液体色の滴るクリーム。頭がフル回転する。液晶モニターの多色ジェリーに心奪われ、イメージがストレートに頭のなかに入ってくる。超現実色のドリル用ビット。パイオツまんこちんぽこザーメンの高速の連続。回転し穴を開ける。それらが精神に突き刺さってくる。リズミカルに。フラッシュ!フラッシュ!フラッシュ!もっと早く。彼はコックを機械に突っ込む。リズムを保とうとする。空気を吸うために頭を少しだけ引っこ抜く。ブラックアウト間近。イメージが激しく閃光を発する。フランコはコントロールできないほど体を揺らす。バン!!彼の頭の後部が爆発する。背中に落ちるのは血、脳漿、骨片。色の回転する螺旋が真っ黒に収束する。女の声が悶えている。ネットワーク転送エラー。オフライン。リトライ、中止、失敗、どっちだ?

Chapter 1 (part 2)
スペースの注射は徐々にその効果を弱めている。皮膚を這うひりひりする感覚。ひび割れた唇にくっつくよだれ。手は横に。ターナーは皮膚に乗っている湿った生ごみを感じることができた。目を開ける。まぶたを上げるのに15分。銀色の輝きが部屋を照らす。ターナーは天井にある水の染みに目をやった。ひび割れから広がる暗褐色の輪が表面の上を這っている。目がパターンを辿る。彼の自己はゆっくりと意識を取り戻す。水の染みはかすかにゆらめきはじめる。星のように。動きがより大きくなる。ねじれ、白と青に変化する。つばでいっぱいの口。しぶしぶ首を曲げる。彼の舌が口の屋根を引き裂く。脳を突き破る。血が口中を満たす。口から泡を吐く。どこでもなく舌がダイレクトに意識へ到達する。初めての集合精神。身体が痙攣で揺れる。ガタガタ動く。癲癇の発作みたいに。目が渦を巻く。出っ張る。口元から溢れたゲロ。胸にかかる。ビジョンの領域が白色光で満たされる。影が光の中弱まってゆく。触手。何百もの細いイカに似た触手が彼の方へ近づく。顔に触れる。愛撫する。皮膚を突き破る。それらが目を貫通する時はもつれた影。痛みはない。暗褐色が心を取り囲んでいる。ターナーは意識が前へ進んでいると感じる。ラッシュ。精神拡張。影と溶け合う。黒へと消散する灰色。白色光の光が空間を満たす。それから消える。ターナーは自己が前へ突き上げられ続けているのを感じる。空間に開いた白い穴。顔がその穴に現れる。特徴なし。目もない鼻もない口もない。皮膚の代りには黒い電気回路盤。静電気がパチパチ言う。初めは静かに。徐々にうるさくなる。ターナーは形象を抜け出す。穴の方へ押しやられる。白色光が工場の灰色に薄れる。長い廊下は均一の外観から成り立っている。静電気は今や機械のカーンカーンという音に変わっている。壁に沿って走っている長いコンベアベルト。黒い。ゴムのベルトの下できしっている金属の歯車。黒と赤に筋がついた壁。男たちが裸で立っている。腕を後ろ手に。壁を背にして。床に沿って移動させられている。ターナーは男たちの間を歩く。誰も彼には気づかない。彼の身体はエーテルになったよう。生者の間を漂う幽霊。穴は金属のドアで終わっていた。規則正しくスライドし男を部屋に入れるために開く。それからまた閉じる。そしてそのプロセスが繰り返される。ブースの壁は飛び散った血でいっぱいだった。男が小さな部屋に連れていかれると針が首を突き刺す。もう一つの装置が鼠径部を覆いペニスを陰嚢から切り離す。剃刀の刃が睾丸を取り除く。身体パーツをビンの中に入れる。血が足元を伝う。コンベアは男を他のブースに連れてゆきそこで炎が傷を焼く。細い鉤が彼の腹部に取り付けられる。そして小部屋に引っ張られてゆく。2フィート四方。壁のモニターに押し倒す。一つのスクリーンには祈祷するカマキリ。もう一方には赤い蟻。メッセージがスクリーン上にフラッシュする間男はゆっくりと細かく切り刻まれてゆく。「役に立て」「聞け」三番目のスクリーン。無数のイメージが最後のスクリーンに踊っている――マッシュルーム雲、血を流している肛門、自慰をしている裸の女。1秒ごとに新しいイメージが現れる。電信するメッセージ。数時間後その人間は家へ運ばれる。それは長々と続いている。ターナーは何時間もこのシーンが最後まで終わるのを観察した。目はずたずたに切り刻まれた鼠径部に釘付けになった。それと血。どの顔もどの苦悶の表情も彼の精神に刻まれた。数分間だけ。他の顔に取って代わられるまで。すぐにすべては一つの顔にぼやけてしまう。その顔はまだ意識の中にある。男の顔だ。黒髪。青い目。薄い唇。皮膚がうごめき始める。波状にねじれる。黒い蟻が目のすみに現れる。大勢の蟻が瞼の縁に群がる。瞼の下で這い回っている。目に群がっている。蟻どもは鼻から口から現れる。顔を這いずり回りながら皮膚を噛みちぎり引き剥がす。黒い回路盤、銀色のワイアが外に曝される。蟻どもは口の中に這い戻る。皮膚を運びながら。回路以外何も残らなくなるまで。ターナーは黒緑色のプラスチックに意識が駆り立てられるのを感じる。暗黒が周囲を取り巻いている。周囲のヴィジョンを横切る銀色の筋。闇を調べる。ターナーは動きを知覚できた。闇が渦を巻いている。こっちに近づいているようだ。何千もの蟻が群れている。意識が蟻へと近づく。活発に動いている音が空気を満たす。共同体意識が物質的にターナーにも感じられる。義務感。この群れと一緒に走る。走るにつれてアイデンティティーと自己意識が薄まってゆく。イメージが精神の間を爆発する。絵を書いている子供のようなターナー。丈の短い緑色の小さな草原を走り抜ける。紙が手の中ではためく。彼は突然止まる。殺到する昆虫に地面に押し倒される。踏みつけられる。起き上がれない。脚が体を地面に押しつける。静寂。体の上の圧力が消えている。目を開くと太陽の光。繁華街の歩道。見覚えのある道路。ハウだ。体中痛みのする刺激の数を数えたい衝動。立ち上がりアートギャラリーに向かって歩き出す。たいてい昼間は何かがやっている。他の歩行者との接触を避ける。連中はこの衝動を満足させるのに何の役にも立たない。つまり役立たず。単なる背景。往来の流れが遅くなる。人々は道路に向かって動いたり店の前で群がってたりする。ターナーは無数の身体に取り巻かれてしまった。いらいらする。人間の群れ、裸で灰色のコンクリートの歩道をのろのろ進んでいる。背中や尻が血で汚れている。頭は剃っている。黒い蟻たちが彼らの背中を革の鞭で叩いていた。彼らの頭の後部を脚で踏みつける。ある男がよろめいた。つんのめって顔から倒れこむ。行列が止まる。蟻が彼の骨盤を顎で掴んで連れ去る。他の蟻も手伝った。足を掴み、バラバラに広げてしまう。蟻がアンテナを尻の穴に突っ込む。深く押しこむ。体が悶える。手と足を鞭打ちながら顎で噛みつく。深くくり抜く。手足を切断。血が傷口から噴き出す。蟻が解体してる間に体が動かなくなる。何匹かの蟻が機械的な手足を運んで前に進み出る。そしてそれらの部品を血に塗れた付け根に付け足す。ターナーは立っている歩行者の間を通り抜けようとした。蟻たちに見つからないように、残酷な仕打ちの対象に選び出されないようにと動かない。

「おい、動けよ。」言いながらターナーは前を押す。

「見てみろ、くそったれ。俺はおまえのせいであんな風になりたくないんだ。」上品な洋服を着た女がしぃっと言った。肘で彼を小突く。ターナーはこれが「従順パレード」だと知った。人間に宇宙だけでなく社会での位置を思い出させるためのもの。行進を見るのをやめない者は群衆から引き抜かれ行進に加わるよう強制される。彼は実物は見たことがなかった。それについて聞いていただけだ。のぞき部屋の他のジャンキーから聞いた噂。彼は麻薬時間の中に存在していた。刺激とその間の間隔が彼の日常生活を支配するものだった。そして彼の脳によって加工された情報。

跪いた女から悲鳴が漏れた。蟻が彼女を傍に引き寄せ体を下に押し付ける。大きな蟻が背後に乗ってヴァギナに針を挿入した。腹をねじる。そいつが降りると別の蟻が同じ場所を占める。這いつくばっていた男が頭を上げる。群衆に向いている蟻を仰ぎ見る。虚ろな目で見つめている。蟻が歩いてくる。男の目を鋭い顎の一突きでくり抜く。男が叫んで体をよじる。顎が首を掴むとひゅっと首が切り落とされる。ターナーは道路をくまなく調べる。どこからともなく何百もの蟻がレイプし体を解体している。血がコンクリートを覆う。金属の代用物が解体された体に取り付けられる。顎のペチャクチャカチカチいう音。苦痛の叫び。心にこだましている。刺激の欠乏で苦しい。コックがエレクトしパンツを押し上げる。陰嚢の下にある穴が厚い粘液を分泌する。それがパンツと下着を覆ってしまっている。目を閉じる。悲鳴と臭気が身体を圧倒している。意識は消えている。幻覚の領域、思考の形が白い静寂に消えてゆく。静寂から形が現れる。裸の女。頭がない。銀白色の肌。ラビアが膝まで垂れている。青い静脈のネットワークが大きな乳房を横切っている。暗い。体のどこもかしこも広がってゆく。虚ろな黒い目をした子供の顔が体の下から現れる。口が大きくなる。黒いOの形まで。ペニスが出現するにつれ顔は白い静寂に消えてゆく。先端から赤いザーメンが発射される。射精するコックの周りに男の体が形作られる。足はももの中央付近にある付け根で終わっている。腕と頭が腰の中央から突き出ている。パンツをすり抜けて滴る刺激の跡を掴もうとする。身体が跳ね返る。痙攣にねじれる。血の奔流でいっぱい。体が前に押されている感覚。奇妙な出来事を抜け出す。ターナーは少しの間目を閉じる。目を開けると大きく開けた空気のある場所にいる。赤いレンガ造りのビルに囲まれている。長年風雨に曝されてるみたいだ。高い像。黒い石。鳥の白い糞で筋がついている。石が欠けている。特徴のない人間の像。空白の顔、空白の身体。腕を伸ばしている。像の土台の周囲には何百もの手足を伸ばした腐った死体。病気の黒い皮膚が骨の周りでぴんと張っている。開いた唇から黒い歯が覗く。大きく開いた傷口が白い蛆虫でブルブルと震えている。腐った死体のきつい臭い。ターナーの鼻。胆汁が喉下をせり上がる。振り返ると像に投げ出された多くの人間を見た。15人の男。裸。体は黒ずんだ気味の悪い澄んだ液体で覆われている。目は赤く、膨れ上がっている。顎から垂れ落ちた涎。ある男は膝がなかった。尻の穴からほとばしった血が玉石に飛び散っている。目の隅から滴る血。ターナーは進み出て一番近くの男の顔をまじまじと見つめた。白い膿の嚢が顔からぶら下がっている。唇の周りの腫物は炎症を起こし、爪からカギ爪の跡で囲まれている。充血した目を覗きこむ。何の言葉も喋らない。ターナーの心には男の声。そんなに長い時間俺達のメッセージは覗き部屋の放送に暗号化されなかったそしてフェティッシュなドラッグの注射はあんたの魔術的な毎日を維持するコンタクトは続くだろう気をつけろやつらがやってくる。ターナーは再び目に意識を向ける。しかしその鈍い光の背後にある知性は変化していた。爬虫類の目。天性の殺人者。眼球が幻覚のフィールドを取り巻く。意識に身を隠す。ターナーの意識は暗闇に爆発する。この黒い霞は消え代わりに混雑した歩道に戻った。蟻はもうどこにも見えない。脳の底がずきずきする。頭の中で声がする。お前は何をしなければならないか知っている今それをやれ人間なんかいない単なる亡霊だ。並外れた活力が集まる。アウトサイダーの死。身なりの良い男女が群れを成して道を急いでいる。頭はまっすぐ前を向き目はどんよりとしている。ターナーは首を縦に振った。顔に嘲笑を浮かべて道行く人々を見ている。彼らの目がくり抜かれるのを心に描く。精神の力に集中する。それを通行人の目に向かって突き刺す。俺たちはこいつら殺されるべき連中をたった一つの考えで精神の力で自動的に殺せるようになった時真に進化したといえる。それが俺のする唯一のことであるからには毎日見てやろう、壊れ死んでゆく何かを。ターナーは青いスーツを着た男に突進する。広げられた手はその目に向かっている。体は極度のスローモーションで空間を進んで行く。人々は彼を汚れたものか何かのように傍を通りすぎる。ターナーが一歩進むのに1時間かかった。

全部化けの皮を剥いでしまえ。

足がコンクリートに触れると地面が生じた。彼の体を飲みこむ。暗黒。触手が皮膚や目から引っ込むと顔が引き攣る。皮膚を引っ張る。触手は目を残す。青い光の爆発が部屋を飲みこむ。

転送完了。

部屋が具現化する。はっきりと。ターナーは鏡を見つめている。目を大きく見開く。充血している。鏡に映る顔の輪郭をなぞる。毛穴、髪の毛、経過する毎秒ごとに全ての細部がはっきりとしてくる。ターナーはその像に集中する。見なれない。その顔の眺めを全く思い出せない。こけた頬をこする。鏡はその動きを捉える。それが彼の体だと確認。めまいがする。体はことごとくエネルギーを失っているよう。四つん這いになって床の上を這う。口の中に吐瀉物の味。手は床の上のごみを触っている。ぼんやりした幻、集中することができない。体が弱ってる。くそったれ、ヤクを打たなきゃならん、そんで気分よくなって……くそ、スペースが多すぎた……そのブツはどこにあるんだよ、おい?注射器の針。ゴムのベルト。緑色の液体の小ビン。ターナーは額から汗を拭う。物事は十分にクリアーだ。腕を縛る。注射器を緑色の液体で満たす。プランジャーを少し押す。針の先端に緑色の滴り。腕の静脈にあてがう。針を静脈に突っ込む。ストラップを外す。暖かいものが体中を流れる。ターナーは椅子の後ろにもたれかかる。手がシャツを汚した吐瀉物を撫でている。頬や顎の上で乾いたゲロを拭う。指を口の中に突っ込む。先端で舌を押す。口の屋根。穴はない。苦痛はない。刺激を数えなきゃならん針なんか嫌いだ今に没頭させてくれ困った時に役に立ってくれ朝にはビーグルを呼んでああこのくそを続けようじゃないか。

「足の間にあるその小さな穴を開け。」金属的な声がターナーの心に響き渡る。


続く

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